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もすこみゅーるだんでぃー

だらだら垂れ流しています
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お雛様
ひな祭りの思い出といえば懐かしい子供の頃の話になる。

そんなに前じゃないと言いたいけど、振り返ると凄く昔のように感じる。

酔っ払って帰ってきた父が転けて雛人形を壊してしまった。
家はひどく貧乏だったけど、雛人形は祖母のもので、そこそこ裕福だったらしく綺麗で豪華だった。
うちには似つかわしくない雛人形だとは思っていた。
それでも3月が近づけばウキウキしてしまう。

綺麗な雛人形を見ているのは飽きないし、楽しかった。

それを壊されたことがどれ程悲しいことだったか。
思い出すだけでも涙が出そうになる。
苦しくて悲しい思い出。

泣き止まないわたしを父は殴った。酔うと気が荒くなるたちで、母もわたしもよく殴られた。
普段はやさしいのだけど酔うと豹変する。
だから酔って帰ってくるのが嫌で怖かった。

それでもこの日初めて父を憎悪の目で睨み付けた。
それが父の暴力を加速させた。

母はわたしをかばってくれたが、直ぐに引き剥がされ、何度もなくられた。

そして雛人形は完全に壊された。

父を激しく呪ったが何もできずに気を失い翌日になった。

血尿がでるほどの暴力で顔も酷く腫れていた。
顔を見られるのが嫌で小学校にも行かず、人気のない廃屋や空き地で時間を潰した。
家にいると職をなくした父がいるからだ。

「大丈夫?」

突然声を掛けられて驚いた。
顔の腫れはひいたけど痣は残ったままになっていたから、見られたくなかった。

「ぼくも学校に行ってないんだ」

そういって彼は話始めた。
ありがちなイジメで学校に行きたくないというものだった。
平日の昼廃屋にいる痣だらけの子供にシンパシーを感じたのかもしれない。

彼は笑いながら自分の服をまくりあげて自分の傷を見せてきた。
ぼろ雑巾のような体だった。
それでも彼は笑っていた。

割れた窓から差し込む光を背にした彼の笑顔はきれいだった。

それからわたし達は毎日ここで会うようになった。

現実の世界はボロボロでもわたしたちの世界は輝いていた。
どんなに醜くてもわたしたちの世界だけは永遠の楽園だった。

ある日彼に雛人形のことを話した。

「じゃあ、ぼくらがそうなればいい」
初めて会ったときと同じ笑顔だった。
手を差し伸べてわたしを廃屋の階段の最上段に連れて行ってくれた。
12段目でわたしたちは座って階段の下を見た。
「12段雛ね」
「二人だけだけどね」
そう言って彼は日向の匂いのする笑みを浮かべた。
「どうして最上段じゃないの? あと一段あるのに」
「なんだって登りかけがいいんだよ。絶頂は落ちるだけだから」
「そういうもの?」
「ああ。そういうものさ。だから、ここでいいだよ」
「よくわからない」
「いいんだよ。ここは永遠なんだから。楽しいよね?」
月のような静かな笑みだった。どこか孤独でさみしいかなしい笑みだった。
「うん。楽しいよ。サイトウくん」

酔った父親に内臓複数を破損させられあっちこっちの骨も砕けていた。
それでも壊されたひな人形に手をのばそうとあがいていた。
人間の執着は恐ろしいものだ。

だが、生きることは美しい。
それゆえに契約を持ちかけた。

わからないなりに彼女は理解したのだろう。
死というものを。
いや、単に苦痛から逃れたかっただけかもしれない。

まあ、どっちだっていいさ。
このきらめきは手に入れたのだから。

サイトウ「はいはーい。どもどもー」
おいら「テンション高いね」
サイトウ「久しぶりすぎてみんな忘れてるかと思うとどうしたものかと思ってさ。パニくった」
おいら「はーそうですか」
サイトウ「テンション低っ!」
おいら「あげられんわ。仕事忙しいんだから」
サイトウ「じゃあ早く寝ろ!」
おいら「お言葉に甘えて。おやすみなさい」
サイトウ「マジでー?」
おいら「ZZZ」

JUGEMテーマ:小説/詩
| 悪魔と死神 | 02:05 | comments(4) | trackbacks(0) |
白猫と死神
白猫に男はひたすら頭を下げていた。
ベンチに並ぶように座り隣にいる白猫に対して、何度も頭を下げている。

ランチタイムの公園でこの光景はかなりシュールであり、痛々しくもあった。

白猫はいわゆるアビシニアンと呼ばれる短毛の猫であり、それのアルビノであった。
しかし、不思議なことに猫の瞳は金色で通常のアルビノとは一線を画すもののように見える。

「あのーそろそろダメでしょうか?」
男は猫にそう言った。

猫は大きくあくびをして眠そうな顔をしてみせた。
通常の猫の表情とは思えない顔だが、猫に謝る男の奇異さが際だつのでそれに気付く人間がいなかった。

「ダメにきまっておろうが」
「では、せめてテレパシーで」
「それでは折檻にならん」

男は口をつぐんだ。
猫は鳴き声を発してはいない。

男の仕事は葬儀屋で、もう一つの顔は死神だった。
何かの揶揄というわけではなく、本当に死神なのである。
死神の名は加藤という。
中肉中背といよりはややメタボであろう。
見た目はどこにでもいるサラリーマンのようでもある。

「おまえも死神なら魂を送ることがどのような意味をもつかわかるであろう」
「はい」
猫は猫らしい動きをしながらテレパシーで話し、加藤はサラリーマン然とした姿で猫に向かって言葉を発している。
あくびをしたり、後ろ足で耳の後ろをかいたりしている猫に対し頭を下げたり言葉をかける男の姿は明らかに奇異に写る。
それが折檻であると猫は言っているのだ。

ただ、男は頭を下げるしかなかった。
管理外の魂を冥界に送ったのだから、それを咎められても文句は言えない。
特に動物は不測の事態で死ぬことが多く、冥界への移送やバランスが重要となってくる。
人が住める場所は有限なのと同じで、冥界も魂の居場所は有限である。
意識が巨大な無意識と統合しやがて個を完全に消失し、大きな無意識の一部となり、全部となる。
一度に多くの個が無意識に入り込むと無意識に意識が芽生える可能性がある。
意識同士が結び合い強固な意識となる。
それが他の意識を呼び寄せ巨大な意識となることを防ぐためにも魂の管理が必要となるのだ。

動物は単純故に強力な感情のうねりが出る。
それは複雑に思考をする人間に比べると短い時間しか保たないが、その分共鳴が強く、瞬く間に巨大化する。

そのため不慮の事故で死んだ魂をすぐに送ることが出来ないという事実もあり、それを管理するために動物の魂専門の死神が存在する。

それがこの猫である。
位としては加藤よりも遙かに上であり、動物の魂を管理するものとしても実働部隊の中ではトップクラスと言っていい存在だった。

人間の魂を扱う加藤はその中でも下級である。

ざっくり説明すれば大企業の部長と平社員ほどの開きがあるといえばわかるだろうか。
人間の世界なら折檻であると明言しているのでパワハラとか言われるかもしれないが、彼らの世界ではそれはない。
その点は封建社会のそれと変わらず、上が絶対である。

「加藤さん。何してるの?」

男が顔を声の方に向けると女が立っていた。
ばつの悪い顔になりそうになるのをぐっと堪えて「えーと、猫先生です」と意味不明な言葉を口走った。

「え?」
「あははは。冗談ですよ。いや、なんていうか、暇なので猫と戯れていたんですよ」

猫の頭と言わず体の隅々まで触ってコミュニケーションを図っているふりをする。
この後どんなにせつく説教されても、仕方がないが、とりあえず、知り合いにはこの姿を見せるわけにはいかなかった。どこでどう言われるかわからないからだ。

「ははは。でも葬儀屋さんが暇なんていいことですよね。誰も死んでないんだから」
「そ、そうですね。痛っ」
上司に爪を立てられ男は慌てて猫を手放した。

猫は一度男の方を睨んで茂みへと消えていった。

男の心中は穏やかではなかったが、とりあえずその場を凌げたことに今は安堵するべきだろうと、空を仰いで話題を変える為に女を飲みに誘うことにした。

JUGEMテーマ:小説/詩
| 悪魔と死神 | 23:20 | comments(2) | trackbacks(0) |
小さきもの
横断歩道まで流れ出した血の跡がむごたらしかった。
あの体にこれほどの血液が入っていたのかと思うほど大きな血だまりの跡だった。

少し太めの男はそれを見ていた。
既に死体はない。
ただ前夜の事故があった痕跡だけあった。

アスファルトに染みこんだ血の色は紫ともピンクとも言い難い独特の色で、横断歩道の白の上に張り出した赤は薄汚れて赤と認識できる程度の色になっていた。

それを男は見つめている。

男の側に小さな猫がいた。
「もういないんだよ」
猫に向かって男はそう言った。
言葉がわからない猫はじっと血だまりの跡を見つめる。
そうすれば帰ってくると思ってるようだった。

鳴き声も発せず小さな猫はそこをじっと見ている。

男はその猫が不憫でならなかった。
子供と同じで理解の範疇の外にあるのだろう。
死という概念は人にしか存在しない。
いや、人でさえも死というものを明確に理解しているかどうか怪しいものである。

死神である男はそう思う。
明確にそれがわかっていれば死は恐怖ではなくなる。
理解できないから人は死を恐れる。

動物には死を恐れているのではない。
本能に従って生きているだけなのだ。
だから、不意に居なくなったことが理解できないのだろう。

現場に残る微かな思念から何が起こったのかはわかった。
小さな猫をかばうための大きな猫は車道に飛び出し小さな猫の首を咥えると一気に歩道に放り投げた。
走り出しても間に合わず、唯一助ける手段はそれしかないという冷静な判断だった。
実際に猫がそこまで考えたかどうかわからない。
もしかすると足がすくんで、咄嗟に放り投げただけかもしれない。

だが、守ったという事実はそこにある。

車は止まらずに立ち去った。
2トントラックだ。
信号変わり間際に加速して信号に侵入してきた。
何かにぶつかった感覚はあったかもしれない。ただ、それに気がつかなかったのだろう。ブレーキを踏んだ形跡はないのだから。

男はため息をついた。
「おれがどうこうできるのは死後24時間以内の人間の魂と決まっているんだ」
猫はその声に反応して男を見上げた。
言葉を理解しているわけではない。
「わからないと思うけど、重罪にあたるんだぞ」
じっと見ている猫にそう言うと男は目を閉じた。

粒子なみの小さな光が血痕から無数に立ち上る。
道行く人には何も見えていないだろう。
ただ、小さな猫には自分を助けてくれたあの猫の姿が見えたかもしれない。

目を開けると小さな猫は一声鳴いてどこかへと走り出した。
結局猫は猫なのだなと男は一度肩をすくめ、猫とは別のほうに向かって歩き出した。

それでも男はなんとなく満足していた。
猫が鳴き声を上げたときに微かに笑ったように見えたからだった。

JUGEMテーマ:小説/詩
| 悪魔と死神 | 12:29 | comments(3) | trackbacks(0) |
友情の対価
ダメだ。動けねえ。

おまけに空が凄く遠い。
冗談みたいだ。
右目があかね空で左目が青空なんて。

バールはないよな。バールは。
……そうだ。あいつはどこだ。

「おい。生きてるか?」
声が聞こえた。
ああ、どうやらやつは生きているらしい。
しかも、こっちよりもマシかもしれない。
「……まるで……体が……動かねえ」
自分の声が遠くに聞こえる。ダメかもしれない。
くそっ。なんでこんなところで。
「辛いかもしれないけど目を瞑るな。しっかりしろ。言葉を聞け。話せ。今救急車が来る。だから……」

目を覚ますと薬品の臭いがした。白い天井が見える。
冷たく硬いコンクリートの感触はないが、体中が悲鳴を上げている。呼吸する度に胸が痛んだ。

うめき声を上げたのに気がついた看護婦が医者を連れてやってきた。
ざっと診察されて問診もされた。
答えるだけで気が遠くなってきたが、堪える。
解放されて再び眠りに落ち目が覚めたのは2日後の夜中だった。

左手に一切感覚がない。

全身の痛みがひいていくかわりに、体中が寒くなった。

つれはおれに比べて怪我の程度はまともだった。
おれよりも先に退院をして見舞いにも来てくれる。
心が砕けそうになるときもフォローしてくれた。そして、葵もおれを助けてくれた。
怪我の功名とでも言うべきなのかもしれない。
別れるくらいまでぎくしゃくしていた関係を払拭してくれた。
こっちが申し訳なくなるくらいに甲斐甲斐しくリハビリにも力を貸してくれた。

「よう」
「おお」
「元気そうでなによりだ。まあ、ちょっとお邪魔かもしれないけどな」
葵は鼻白んで「そうよ。帰ってよ……なんてね」といった。
「いや、マジで帰るよ」
「せっかく来てくれたんだから少しはいろよ。葵。飲み物買ってきて」
「はいはい。どーぞごゆっくり」

「リハビリどうよ?」
「うーん。結構大変だな。とはいえ負けてらんないし」
「おっ。絶好調男が帰ってきたな」
「たりめーじゃん。死ぬまで絶好調だっつーの」
2人で軽く右の拳をぶつけた。
いつもの合図だ。

「まあ、おれらも年だからな。昔のやんちゃ坊主じゃいられないってことだ」
「まあ、確かにあのころは喧嘩上等で、売ったり買ったり忙しかったからな」
「忙しいって笑えるな。そんなので忙しくても全然意味ないのに」
「ちがいない」

2人で笑った。

こいつがいたから生きていられた。
葵に連絡をいれてくれたのもこいつだった。
この先どれほど恩を返しても返しきれないだろう。

「そんなことはないよ。もう十分に貰っている」


バールで頭をばっくり割られて血だまりの中で息絶えた男に向かって長身痩躯の日本人離れした風貌の男はそう言った。
「きみそのものを貰っているのだからね。これ以上何をきみに望めばいいのだろう。それは贅沢というものだろ」
男はきびつを返すと途中で投げ出された工事現場から去った。

JUGEMテーマ:小説/詩
| 悪魔と死神 | 00:23 | comments(0) | trackbacks(0) |
契約
男は悪魔だと名乗った。
ぼくはもうじき死ぬから自分と契約しないかと言う。
だけど、どうなんだろう。
仮に願いを叶えて貰うとしたら何がいいだろう。

「雪が見たい」
「雪? 時期がまだ早いよ。しかもここは雪なんか降らない土地だろ。世界を揺るがすようなメチャクチャは無理だ」
悪魔と名乗った男は静かにそう言った。
世界なんかボクが死んだらどうなったってかまわないのに。
「ねえ。本当にもうすぐ死ぬの?」
「ああ。間違いない」
「寿命を延ばすことは?」
「永遠の夢の中で生き続けることは出来る」
「そうなんだ。でも、それはしたくないな」
「変わりはしない。きみが思うままの世界が描ける」
「それじゃ意味がないんだ。悲しくても辛くても生きている実感が欲しいんだ」
「どうしてだい? わざわざ辛い思いをしなくてもきみは今十分に辛いはずだ」
「そうじゃない。ただ感じたいんだ。ありのままの世界を」

男は悲しげに微笑んだ。
そう。微笑んだように思えた。

「きみは確実に悲しみに触れる。だから、ぼくと契約するべきだ。優しい夢で眠るのがいい」
「十分夢は見たから現実を感じたいんだ」
「……それは本当に悲しいことだよ」
「かまわないよ。もう、何もないから」
「本当に何もかも失うそれでもいいのかい?」

少年は意を決したように顔を彼に向ける。
「あなたはとても優しいんですね」
「そうでもないよ」
「ボクの両親がボクを諦めることを知っていたんですね」
「だから、きみが現実に触れる理由なんて無い」
「ボクは忘れられたくないんだ。10年眠り続けて迷惑をかけてきたけど、それでもなおボクは忘れられたくないんだ」
「決してきみのことは忘れることは無いと思う。それがわからないのかい? それでもその復讐にも似た気持ちできみは」
「ああ、いいんだ。だってボクは殺されるんだから。だから、最後に彼らにちゃんと覚えさせなきゃ」
「ちがうよ。だけど、ボクの言葉はきみには届かないんだろうな。きみも彼らも酷い後悔をする」

男は酷く悲しそうな顔をしてこちらを見ている。
何故そんなにボクのことに一生懸命なんだろう。
初めて会ったのに。
本当に悪魔なら何故そんな悲しい顔をするのだろう。

「本当にいいのかい?」
「まだ何も言ってないよ」
「わかるさ。それくらいのことは」
「契約すると望みは必ず叶うの?」
「ああ。もちろんだとも……本当にいいのかい? 絶対に後悔するよ。ボクは醜い魂には興味がない。きみは永遠の苦痛の中に堕ちる。それでもやるかい?」
「今以上の苦痛なんてないよ」

ボクは事故にあってベッドの上に縛り付けられている。
思考はグルグルと回るのに体は全然反応しない。
そうやってずっと闇の中を彷徨っていた。
ボクは16歳から闇の中にいた。

悪魔と名乗っている男の話によるとボクは10年以上眠っているらしい。
同年代の人よりもぐっと老け込んでいるという両親は、ボクのために10年以上も無償の愛を注いでくれたらしい。
でも、ボクには残念ながらそれが感じられない。
だから、選ぶのはボクを諦めることによっての「後悔」それだけだった。
そうすれば、ボクの両親は決してボクを忘れない。そうだ。ボクは誰からも忘れられることが怖いんだ。
だから、せめて両親くらいにはボクは覚えていてもらいたいんだ。

簡単なことだ。

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| 悪魔と死神 | 00:30 | comments(2) | trackbacks(0) |
再会の街
高校時代の好きな人との再会は自分の兄の結婚式だった。
地元の農協に勤めていた兄は同じ農協の後輩と結婚した。

「まさかヤスの兄貴とうちの妹がなぁ」
「もう。その名前で呼ばないでよ」
「仕方ないだろ。俺の中ではヤスはヤスなんだから」

名字は在り来たりな鈴木で、同じ学年に5人いたから、それぞれあだ名がついていた。
私はヤスコという名前で「ヤス」と呼ばれていた。
いっそちゃんとヤスコと呼ばれればどれだけ良かっただろう。最初はヤスコだったと思う。
でも、この国の国民性なのだろうか小さくしたり短くしたりするのが好きだし、得意だから、ヤスコも次第にヤスだけになった。
いったい「コ」をつけないだけの労を惜しむことにどれだけの価値があるのかさっぱりわからない。

それとも「ヤス」と呼ばれて普通に返事をしたのがよくなかったのだろうか。今となっては詮無いことかなと思う。

「高校以来か? 懐かしいな。ついでに同窓会でもやってくれればいいんだけどな」
「なに言ってんの。一昨年同窓会やったのに来なかったじゃない」
「仕事が忙しくてさ」
「正月なのに?」
「え? そうだっけ?」
「そうよ。都会に出て変わったんじゃないの」
「出た。田舎根性」
「どうせ田舎もんですよーだ。東京に出て冷たくなったね」

彼はクスクスと笑いながら私の横を歩いている。
この県の第2都市で結婚式は挙げられた。
私はこの県で一番大きな市に帰るところで、彼は私が住んでいる町にホテルの予約をしているとの事だった。
翌日朝一で帰らないとならないらしく、実家からでは出社時間に間に合わないからホテルを予約したと言っていた。

「全然変わらないね。一目でわかったよ」
「そうか? まだ学生で通用するって事か?」
「違うよ。あの頃と同じ面影があるってこと」
「ふーん」

彼は気のない返事をしてぼんやりと空を見上げた。
わたしもつられて見上げる。

星空だった。
満天の星空。
第2都市と言っても目の前にしっかり見えるくらいに星が見える。
それだけ田舎ってことなのだと痛感する。

高校最後の文化祭の準備の最終日。今日みたいに晴れた日の夜だった。田舎の道は街灯が少なくて空気も澄んでいるから星が近くに見える。新月で星がもっときれいで、横には彼がいて、秋の虫が鳴いていた。高鳴る心臓の鼓動が消えるから安心できた。
帰り道が同じ方向だったから、2人で帰った。高校2年のときアスファルトが敷かれた道は夜空に光がある分深い闇の上を歩いているような気持ちにさせた。
すっと引き込まれるような怖さがあったけど、横に彼がいたドキドキの方が勝っていた。

「そういえば昔こんな風に帰ったよな」
気持ちを見透かされたかと思って心臓が止まるかと思った。
その一瞬の間をわたしが覚えていないと思ったらしく彼は「もう10年も前のことだからね」と、困ったように笑ってわたしに言った。
慌てて否定しようとしたけど、意識しているように思われたらどうしようとか、そんなことを考えているうちに答えを切り出すタイミングを失って押し黙ったまま駅に着いた。

せっかくだからとグリーンの指定席を購入して二人で並んで座った。
売店で缶ビールを買って彼はわたしの横に座る。
「エビスでよかった? おれこれ好きなんだよね」
「うん。わたしはあまりビールに拘りないから」
本当のところビールはスーパードライが好きだ。さっぱり飲めるからなんだけど、思わずそんなことを口走った。
それでも熱帯夜の夜道を歩いた後だから、小さく乾杯をしたあと喉を刺激しながら滑り落ちるビールの心地よさは格別だった。
よく見るとほんのり彼の顔が赤くなっている。酔っぱらっているのかもしれない。さっきまでは暗がりだったから気がつかなかった。

電車がゆっくりと動き出す。
20分の短い旅で少しだけ贅沢な時間。
そんな時間はあっという間に過ぎてあと5分もすれば駅に着く。
そして、さよならだ。
駅で彼は駅に併設されているホテルに入ってわたしはタクシーを拾ってバイバイ。それだけ。それだけなんだ。

「そういえばさ。さっきおれのこと変わってないって言っただろ?」
「え? うん。どうしたの?」
「いや、なんてか、おまえは変わったよ」
「えー。老けたってことー?」
「いや、ちがくて、なんていうか……キレイになったなって……あ、まえからキレイだったけど……な」
「え?」

私の方を向かずに彼はそう言った。
心なしか少し赤みが増している気がした。

「あのさ。さっき文化祭の帰り道の話ししただろ。おれさ。あのときすげー緊張していてさ。何話していいか全然わからなくてさ。すげー困った。でも、あの時ちゃんと話しておけばよかったって、ちょっと思うこともあるんだ。だから、今日はこうやって会えてよかったよ。うん」
早口にわたしが何も言えないまま彼は一気にそう言うとぐっとビールを煽った。
照れくさそうにしないでよ。こっちまで意識しちゃうじゃない。本当にそうなの? どうなの? ああ、鼓動が早くなる。このあとはどうなるんだろう? やっぱり一緒にホテルに?
大丈夫なのかな。初恋は実らないって言うし。でも、幼稚園のときのタクミくんと、小学校のときのカズシくん。中学校のときのタイゾウくんも入れれば初恋じゃないし。

あれ? 彼ってなんて名前だっけ?
どうして思い出せないんだろう?
……いいか。今は一緒にいるんだし。
この先はきっと……


「そう大丈夫だよ。この先はきっとシアワセだよ。きみの思いが強すぎて少しだけ彼のバランスが崩れただけ。おかげで今回はボクがその場に居ても彼にすり替わろうとするから歪んだ感じになってしまってね。もっとも相手は別の夢を見たがっていたから、そっちを与えたんだけどね。残念ながらきみと結ばれたいとは思っていなかった。一夜の遊び相手だと思っていたみたいだ。それでもこの夢はこの先はきみの望むようになるから……永遠にお眠り」

そう言って結婚式帰りの男女が交通事故にあった現場から男は瑠璃色と緋色の石を手にして、その場から去っていった。


サイトウ「はい。そういうことでお久しぶりですけどもね」
おいら「なんだよ。その漫才師風の出方は」
サイトウ「いや、なんか久しぶりなんでテンションあげていこうと思ったんだけど」
おいら「別にいいだろ。無理しないで」
サイトウ「みんな忘れてないかと思うと不安で不安で」
おいら「もっと前から忘れられているから心配するな」
サイトウ「もっと出演希望」
おいら「面倒なんだよ。ネタ思いつかないし。人殺さないとならないし」
サイトウ「得意ジャンルじゃん。富野かだいかってくらいに」
おいら「巨匠と一緒にするなよ」
サイトウ「遅筆は巨匠なみだけどな」
おいら「返す言葉もありません」
| 悪魔と死神 | 01:56 | comments(4) | trackbacks(0) |
another heaven
この店にその女が現れたのは9月の第2週の月曜と火曜の境目だった。
月曜の深夜というのは飲食では開けていても、光熱費と人件費の方が高くなる時間帯だろう。

だから、マスターが1人で店にいた。
1時までに客が来なければ店は閉めるつもりだった。

そんな時間に細身の女が現れた。

顔色は悪く完全に血の気が引いていた。
嫌な客に掴まったかもしれない。
とっさにマスターはそう思った。
この時間からだと終電を無視する可能性がある。
そうなると、明け方まで付き合わなくてはならない。

細身で長身の男も一緒に入ってきた。
男はどこか日本人離れをしたような印象をうける顔立ちだった。
この男女が2人組でないことは知っている。

男は半年以上ぶりの来店だった。
もう来ないものだと思っていた。
いや、来ないで欲しかった。
それがマスターの素直な気持ちだった。

男はさっさと普段常連の茂が座るカウンター中央の席に腰をかけた。
女は少し入り口付近で立ち止まりきょろきょろして、カウンターの右隅に腰を下ろした。

それぞれにコースターを出し、おしぼりを渡す。
マスターは男を無視して女に声をかけた。
「なにになさいますか?」
「……マティーニを」
「かしこまりました。ジンやベルモットに何か指定はございますか?」
「ジンはタンカレー。ベルモットはチンザノ・エクストラ・ドライで。気持ちチンザノを多めで」
「かしこまりました」

「シンデレラ」
カウンター中央に戻ったマスターに男が声をかけた。
「……かしこまりました」
男はカウンターに肘をつきメガネを手を添えてマスターを眺めている。

マスターはバックバーからタンカレーを手に取りカウンターにそれを置く。
普段は冷やしてあるものを使うことが多い。
ドライを好む注文の場合キリッと仕上げるためである。
だが、この客の場合ドライ好きというほどでもないようだ。
それを考慮して常温のジンを使用することにした。

常温には常温の良さがある。
冷凍庫に入れている冷え切ったジンでは香りがたたない。
それに口当たりも常温のものをステアして冷やすことによるものでは違いが出る。
多少飲みにくくなる。

それがこの客にはむいていると判断しての選択だった。

冷蔵庫からチンザノを取り出す。
チンザノはワインのリキュールだから冷蔵庫に入れておいたのは劣化のことを考えての配慮だ。

マティーニはそのレシピだけで口論が始まると言われているほど、一家言ある人物達が多いカクテルだ。
キングオブカクテル。
カクテルはマティーニに始まりマティーニに終わる。
そういうことも言われるほどのカクテルである。

だから、どのレシピが正しいとかその判断も難しい。
究極のドライマティーニはチャーチルのベルモットを横目で見ながらジンを飲むというものだろうか。
ドライが主流の中ベルモットを多めに注文する客は少ない。

手際よくマティーニを作り女性客の前に出す。
「お待たせしました」
女は儚げな笑顔を浮かべて一口含んだ。
グラスをコースターの上に戻した。

カウンターの中央に戻ると今度はシンデレラを作り始める。
オレンジ、レモン、パイナップルのジュースをそれぞれ均等にシェーカーに注ぐ。
それをシェイクしてカクテルグラスに注げば完成。
所謂ノンアルコールカクテルだ。

「お待たせしました」
男はそのカクテルに口を付ける。
「美味いね。相変わらずだ」
「……ありがとうございます」
「そうそう。マスター聞いてよ」
マスターは男の言葉に反応せずにいた。
その反応を見て男は話しを勝手に始める。

「シンデレラってさ。最後がハッピーじゃなければ物語として成立しないと思わない? だって、結局彼女は魔法が解けて現実に引き戻されるんだから。それはバーという魔法をかけられて一時夢を見るのに似ていると思わない? ここに逃げ込んだところで店から出たら現実しかないのにさ」

女の表情がみるみるうちに変わっていった。
マティーニによって少し生気を取り戻したはずの顔が再び幽鬼のような青ざめた顔に変わった。

「すみません。チェックを」

女はそう言って立ち上がった。

「いえ、お代は結構です」
「でも」
「気になさらずに。不快な思いをさせてしまいましたので。こちらの不手際です」
マスターはやさしい笑みを浮かべてそう言った。

「すみません」
女はそう言うと足早に店から出て行った。

「不手際ねえ」
「何度来ようが気持ちは変わらない」
「そう? まあいいけどね。時間は腐るほどあるし」
そう言って男はカクテルグラスの端を指でなぞった。
「ねえ、どうして彼女に「またのお越しを」って言わなかったの?」
マスターの顔が一気に青ざめた。
確かに不手際であった以上次の来店を来たい。
「わかっていたんだろ? 今日はきみに会いに来たんじゃない。彼女に会いに来たんだよ。あと10分も彼女の命は持たない。だから、ボクも帰るよ」
「今片づけをしていますので、少々お待ちください」
「足止めしたって無駄なのに。それはわかっているでしょ? まあ、あの時はきみが娘さんのこと思い出して踏みとどまったって感じだったけどね。残念だったよ。あの片目の義妹さんが来なければね。今頃はさ」
マスターは無視するようにグラスを片付けていた。
「だから、時々義妹さんのことを思い出すんだよ」
マスターはすっと顔を上げて男を睨み付けた。
「やっと見てくれたね。そうそう。いいね。自分のことはどうでも良いくせに身近な人物が傷つくことは耐えられない。そんな目。でもさ、それは嘘だね。他人で辛うじて繋ぎとめられている命なんてさ。クソ見たいにすぐに捨てられるじゃない。きみはその繋ぎとめているものにすがっているに過ぎなんだよね。今仮にボクが指を2回ならして、きみの大事なものの命を奪ったとしたらきみは怒るだろう。その後にきみは簡単に命を投げ出す。例えばボクを殺そうなんて大胆なことをして、死んでしまう。そんな感じだ。未練なんて何もないだろ? 彼女たち以外に。さて、そろそろ行こうかな。2千円もあれば足りるでしょ? ここに置いていくね。ちなみに彼女がどうして死に至るか教えようか? ああ、きみは他人に興味がないから、そんなことはどうでもいいよね。それじゃあ、また来るよ。それまで自分を愛せるようになっていてね」

男はマスター以外が見てもなんとも思わないようなぞっとする笑みを浮かべて、そう言うと店を出て行った。

カクテルグラスを洗っている手に力が入りすぎて割れた。
左手の人差し指に血がにじんでいる。
その赤さが生きていることの証明なのだろう。
マスターは流れ落ちるそれをしばらく眺めていた。


サイトウ「はい。そういうことでね。ぼくもちょっと横浜方面で活躍してみましたよ?」
おいら「活躍ねえ」
サイトウ「ニヤニヤしながら「1人コラボ」とか笑っていたくせに」
おいら「ちょ、それはずかしいから。言うなよ」
サイトウ「実のところ一挙両得くらいで考えているでしょ?」
おいら「そうそう。この後あっちの方も繋げてねって。CL○MPかよ!」
サイトウ「うわー。ノリツッコミじゃん。さむー。でも、実際やる気でしょ?」
おいら「そうさのー。あっちはまだ形がないからのー。もう少し書いてからかな」
サイトウ「って、ことはボクもあっちに出ることが出来るわけだ。出番が増える。にしし」
おいら「ま、その方が楽だしね」
サイトウ「手抜きのためかよ!」
| 悪魔と死神 | 15:15 | comments(5) | trackbacks(0) |
髪を切る理由
髪の毛を伸ばしているのは他人には些細なことでも、私には重大な一言があったから。

「おまえさ。髪の毛長い方がいいかもな。伸ばしたら?」

好きな男の子にそう言われたのが小学校6年生の時だった。
整えることはあっても、本格的に短くしたことなど1度もなかった。
その恋は今でも続いている。
でも、付き合っている訳じゃない。いわゆる片思い。それが6年間も続いている。
ちょっと自分に呆れるほどだけど、仕方ないよね。
好きなんだもん。

ちょっとボリュームのある髪の毛で染めたりすると手入れが大変だから未だに真っ黒だけど、少し前から流行っている黒髪のおかげで、今は教室でも浮いた存在になっていない。
むしろ髪の毛だけならクラスで1番キレイだと思う。
高校3年でついたあだ名がアジアンビューティーを略してアジティー。
高校に入ってから仲良くなった友達は、そんな呼び方をする。

そして、好きだった彼も私を呼ぶときはそう呼んだ。
その他大勢の1人でしかないのかもしれないと思って少しだけ悲しくなったけど、彼の好きな長い髪は結局止められなかった。

高校3年の夏になって、彼には彼女が出来た。
栗色のショートカットの目がくりくりしたかわいい彼女。
受験のための予備校からの帰り道で2人が手を繋いで歩いているのを見てしまった。
どう見たって恋人同士にしか見えなかった。

6年間の思いが砕けた。
目の前が涙でにじんだ。
泣いているところを見られるのが恥ずかしいけど、止まらない。

不意に腕を掴まれた。
急に目を開いたように現実が生々しく感じる。
次に大きなクラクションが鳴った。
引っ越し会社のトラックが目の前を通り過ぎた。

「危ないなぁ。大丈夫?」

腕を握ったままその人は私にそう言った。

「きみみたいなかわいい子がこんなところで死んだら勿体ないよ。あ、腕ゴメン。痛かった? とっさに手が出たから痛かったかな?」

人当たりの善さそうな長身の男の人が立っていた。
「キレイな髪だね……あ、ごめん。職業柄でさ」
そう言いながらその人は名刺を取り出した。
そこには名前と店名と美容師であることが書かれている。

「ね? 怪しい者じゃないでしょ? って、これでも十分に怪しいか」

人なつっこい顔で笑う人だ。
これも職業柄なのかな?

「暇なら来てよ。サービスするから。金額安くする程度だけどね」

それからしばらくして思い立って髪の毛を切ることにした。
本当は次の日に行きたかったんだけど、泣きすぎて目の周りが酷いことになっていたから止めた。
きっと美容師さんにあったのも何かの運命なんだと思う。
髪の毛を切ることで諦めることに繋がるんだ。
でも、本当に失恋して髪の毛を切るなんて……かっこ悪すぎるかも。

「あれ? 本当に来てくれたんだ。ありがとう」
いきなり後ろから声をかけられた。
行ってみたけど、結局ドアの前で少し躊躇っていたら美容師さんがいた。

振り返るとあの笑顔がそこにあった。
そして、店の中に連れて行かれた。

シャンプーも何もかも彼がやってくれた。
初めから決めていたように迷い無くカットしてゆく。
何も言わなかったのに、そうされることが正しいとさえ思える。
ミディアムでトップにボリュームを持たせて、黒髪が重く感じないように梳いて、少し毛先に遊びを持たせて……色々説明してくれたけど、結局何が何だかわからなくって、少し困惑していたら「ヘアカタログに載せたいから写真撮ってもいい?」と聞かれた。ますます困惑してしまった。
結局彼に押し切られる形で写真は撮られた。

夏休みがあけて学校に行ったらみんなに驚かれた。
それはそうよね。
だって、すっかりイメージが変わっちゃったわけだし。

髪の毛を伸ばせと言った彼は「アジティー。似合ってるじゃん」と事も無げに言ってくれた。
でも、なんにも感情が動かなかった。
どうしてだろう?

髪の毛を切ったせいでなんとなく気持ちも軽くなった気がした。きっと重い気持ちだったんだと思う。髪の毛と一緒にそれがなくなった。
だから、前向きなんだ。
わたしは生まれ変わったんだ。

美容師さんに感謝しなくっちゃ。
サイトウさんに。


ぼくは車に撥ねられもうじき死ぬ彼女に言った。
「キレイな髪の毛だね。でも、きみは死ぬんだ」
「助からないの?」
「ああ、無理だ」
「そう。残念」
妙に淡々としている。
「きみが望むなら永遠を見せてあげる」
「幸せになれるの?」
「悲しみや辛いことばかりの世界じゃないよ。きみが望むなら」
「そう。幸せにはなれないのね」
「何を幸せかと感じるのは人それぞれだよ」
少し間が開いて彼女はぼくに尋ねてきた。
「あなたは悪魔なの?」
「そうだよ。よくわかったね」
「じゃあ、契約をすると地獄の苦しみを味わうのね?」
「違うよ。ぼくはきみを永遠にするだけさ。きみの望む世界できみの人生を再構築するだけだよ」
「ねえ。髪の毛が切りたいわ」
「それが望み?」
「ええ。そう。それが望み。契約しましょう」
「ああ、契約成立だ」

彼女とはそれで契約が成立した。
ただ、髪の毛を切るために彼女はぼくと契約をした。
正直彼女が本当に望んでいるのが何かはわからない。
彼女はぼくと契約しても心を閉ざしたままだった。
だから、悲しい思いをして何度も髪を切る。
ただ、それだけを繰り返す夢を見ている。

この宝石は青く美しい。
彼女が悲しむ度に青い光が増すようだった。
ぼくは初めて心から人が悲しく哀れな存在だと思った。


サイトウ「はい。どうも。サイトウですけどもね」
おいら「テンション高いなぁ」
サイトウ「なんか違う悪魔出てるじゃん? もう差別化を図らないとすっかり忘れられるよって」
おいら「変な差別化はいらないんじゃないか?」
サイトウ「いやねー。個性って重要ですよ。特にこういう字とかの世界では」
おいら「まーなー」
サイトウ「やる気ないの?」
おいら「無いわけ無いじゃん。じゃなきゃこんな長い文章書かないよ」
サイトウ「だよなー。この倍はいく勢いを殺してこれだからな」
おいら「ホント。いい加減にして欲しい。と自分に言いたい」
サイトウ「睡眠時間削ってまで書く事じゃないよなー」
おいら「じゃあもう書かない」
サイトウ「あ、ごめ、ちょ、書いて」

いつものオチです
| 悪魔と死神 | 23:51 | comments(2) | trackbacks(0) |
愚か者の願い
※人を多分に不快にさせる表現が含まれています。覚悟が無ければ読まない方がいいです。


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| 悪魔と死神 | 22:07 | comments(5) | trackbacks(0) |
手を繋ごう
Charaの「やさしい気持ち」という歌が好き。
特にサビの部分が好き。

だって、女の子は好きな男の子に手を繋いでいて欲しいと思うものでしょ?
それもずっとずっと。
女の子っていうにはちょっと年齢が行きすぎているけど、でも、恋する乙女の気持ちっていうのは誰でも変わらないと思うんだ。

あれ? ちょっとイタかったかな?
でも、どう思われてもわたしは手を繋ぐことが大好き。

寒い冬の空も、暑い夏の夜も、いつでも手を繋いでいたい。
だって、そこにあるだけで安心できるから。
この人は遠くにいかないんだって。
わたしの側に居てくれるんだって。

だから、彼の手が、温もりが好きだった。

あの日わたしは彼に突然の別れを告げられた。

いままで側にあった温もりと安心感はどこかへ一瞬にして消えた。
理由を聞いても教えてはくれない。
直せるところは直すから。
それでも何も言ってはくれない。

ただ、疲れたとだけ言い残して彼は去っていった。

どうすればいいのか判らなくなった。

もうこの右手に用事はない。
この手は永遠に温められることはない。

そうだ。こんな右手は捨ててしまおう。
彼がわたしを捨てたように、わたしもこの右手を捨てればいいんだ。

どう歩いたか判らぬまま家の近くにある工場に忍び込んだ。
と、言っても鍵は開いたままだった。
確か何かの小説で読んだあの機械を使えば簡単にお別れできる。

あった。
見た目は古いけど、たぶんこれだろう。
小説に書いてあったのとほとんど同じ形をしているし、間違いない。

なんて機械かは知らないけど、鉄板を簡単に折り曲げる事が出来る機械だ。
スイッチはあっけなく見つかった。
電源を入れるとモーターの音が響く。

その音は罪を非難するような声にも聞こえる。
頭がしびれるようだ。

わたしはその機械の間に手首までねじ込んだ。
そのまま機械のスイッチを押した。
ゆっくりと圧力が掛かってくるのを感じた。

人の力ではどうしようもないほどの力。
このまま押しつぶされればいい。

「なにやってんだ!」

突然男の声が響いたかと思うと、次に硬い物を殴る音が近くで響いた。
何が起きたのか訳が分からないままでいると腕の圧迫感がなくなっていた。

「あんたこんなところで何やってんだ」
「……」
「何があったかしらないけど、うちでなんかされると困るんだ」
「……」
「まあ、鍵をかけ忘れたおれも悪いんだけどな。社長には言えないから不法侵入のことは黙っていてやる。行くぞ」
「?」
「病院だよ。病院。骨に異常があったら大変だろ」

そう言って彼は、私を連れて病院に行った。
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| 悪魔と死神 | 01:31 | comments(5) | trackbacks(0) |