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もすこみゅーるだんでぃー

だらだら垂れ流しています
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call 6
道のど真ん中で猫が喧嘩をしていた。正直な話し通行の妨げになっている。
殺気だった猫たちには正直近づきたくないが、ここを迂回すると家に帰るのに時間がかかる。

猫ごときで10分のロスをするのがイヤだった。

1匹対10匹くらいだろうか。
白い猫を取り囲むようにして威嚇している。
巻き込まれたくはないが、大きな足音を立てたら、猫たちは逃げそうな気がしたから、やってみることにした。

アスファルトを踏みつけるようしてに大きな音を立てた。

取り囲んでいる猫のうちリーダー格らしき黒猫以外は驚いて逃げ出した。
黒猫はこっちを睨んでから逃げた。
まるで人間のようで気持ちが悪い。

白猫といえば、気が抜けたのか目の前で倒れている。

放置すれば黒猫が帰ってきて目覚めが悪い結果になりそうだった。

幸か不幸か2年前に引っ越したうちのマンションは得体の知れない外国人も問題なし、しかも保証人も怪しい感じで通すマンションだった。
野良猫を連れて帰っても誰からもおとがめはないはずだ。

ため息を1つ飲み込んで猫を抱えた。

当たり前のように玄関の鍵が開いていた。
当たり前のように自分がそうしたボロボロのソファーに座りチョコレートをガツガツ頬張っているユウがいた。

チョコやらケーキやら甘いものが大好きでそのくせまるで太ることを忘れてしまったかのようにユウは痩せている。

いつも彼女の細さに戸惑いを感じる。
ダイエットを叫んでいる女性に見せるとうらやましがるかもしれないが、うっすらと浮いたあばらや、くっきりとした鎖骨はただ痛々しいだけで欲情さえさせないものだ。
いっそデブと言われる女性の方がいいと思える。

拒食症かとも思ったがそういう感じでもなく、料理の腕も一流でおれが帰ってくるのを見計らっているかのように温かい料理がテーブルの上に置いてある。
いつものようにコンビニで買ってきた弁当の入っている茶色の袋をその横に置いて猫を抱きかかえたまま部屋に入った。

「お土産?」
「いや。猫」
「ねこ?」
ソファーに猫をおくとユウは猫を覗き込んで「アビシニアンかな?」と言った。

「へーよく知ってるな」
「オス? メス?」
「メスじゃないかな?」
「ふーん」
「ここじゃ飼わない。回復したら職場に持って行くから変なことするなよ」
「あったりまえじゃん。何もしないよ」

ふてくされて頬をふくらませてユウは日本人離れした長い足をバタバタさせた。
ミニのワンピースから覗く太ももでさえ成人男性の腕の太さくらいしかないのではないかと思うほど細い。

ユウは頭部以外枯れ枝を集めた人形に命を吹き込んだら出来上がったような印象だった。どこか無機質で生命を感じさせないところがある。
黒髪で目鼻立ちがはっきりとしているエキゾチックな顔立ちでそれも人形のようだ。
唯一人形のそれと違うのは目にこもった生命力かもしれない。

もしかすると人形に生きたかった人間の目だけをはめ込んだのかもしれないとさえ思えるほど、目だけは生命に満ちあふれ美しい色をしてる。
鳶色だ。
生命力に溢れていてそれでいて日本人のそれとは違う美し蠱惑的なものだった。
ただ、それは他の男にとってのもだ。
少なくともおれにとっては屑よりも役に立たない。

ユウのか弱さも、美しさもカノジョが獲物を捕らえるための毒だ。それでもおれには通用しない。それを知っていれば対処のしようはある。
理性が働けばいいだけのことだ。

猫とテレビを交互に見ているユウを残してダイニングキッチンのテーブルでコンビニの弁当をいつものように食べる。
目の前に美味そうな料理があるが食うわけにはいかない。

テレビにも動かない猫にも飽きたのかユウが声をかけてきた。

「またコンビニ弁当?」
「ああ。作るのは面倒だから」
「あたしが作ったの食べればいいじゃん」
「いらない」
「何も入ってないって」
「信じないよ」
「食べてよ」
「いやだよ。あまりしつこいと、わかるだろ?」

そういうとユウは黙った。
そして足をバタバタさせる音がテレビの音の重なって聞こえた。

とりあえず実質的被害が少しあった程度で多少の危険も継続はしている。
それでも、これ以上警察と関わるのは面倒だったし、うっかり死んでも大した後悔はしなさそうだから、日常と非日常の間をゆらゆらと漂うな生活も悪くないと思っていた。
弁当を食べながらユウのたてる生活音を聞いていた。

JUGEMテーマ:小説/詩
| CELLULAR | 01:35 | comments(0) | trackbacks(0) |
call 5
ドアを開けるとカウンターの中から声をかけられた。
「いらっしゃいませ」
長身痩躯ではあるが、階段を登った男ではない。
柔和で落ち着いた笑みを浮かべる男だ。

おれは入り口にほど近いカウンターのスツールに座った。

18時を少し回ったころだった。
今日の口開けだったのだろう。
バーの空気は静かで淀んだ感じがしなかった。

当然あの感覚はなかったが、マスターとおぼしき男から微かにだが、あの感覚と似たようなものを感じた。

「なにになさいますか?」

鈴の音を鳴らすような心地よい女の声だった。
おれの斜め前に立っていた女の声だ。
視線を向けると一瞬息を呑むようなほどの美人だった。
ただ美人だというのに何故声をかけられるまで気がつかなかったのかはわからない。
人並みに女に興味はあるし、美醜に関してもそれほどずれているとは思わないから、気がつかなかったことにやや動揺した。

不思議な目の色をしている。
左右で少しだけ瞳の色が変わっている。
左目は普通だが右目は見つめてはいけないと直感的に思った。
そう思ったとたん女の右目が青い炎を吹き上げた。
するするとその炎はおれの方に伸びてきた。

スツールから降りようとしたが体が動かない。
声も出ない。
身じろぎひとつ出来ずにいると炎がおれの体に触れる。
左手の指先に触れた。
熱を持たない炎だった。
むしろ寒色である青から想像する冷たさを感じた。
その刹那一気に全身が焼かれた。
炎は皮膚を瞬く間に炭化させ、脂肪、筋肉を侵食してゆく。
骨に到達して神経を焼き尽くす。
感覚があった。
何もかもが破壊されていゆく感覚だった。
それでも痛みや恐怖はない。ただ崩壊してゆく感覚があるだけだった。

そう思った。

「お客様?」

男の声で我に返った。
両手を一度見たが、焼けたあとさえない。
幻覚を見たのだろうか。
あの手の現場に行ったあとは大抵調子を崩す。
そのひとつだったのかもしれない。

「ジントニックを……あ、いや、ジンフィズにしていただけますか」
「ジンの指定はありますか?」
「ハウスで使っているので構いません」
「かしこまりました」

ビフィーターを取り出した。
ハウスがビフィーターということか。
47度のビフィーターはシャープな感じになる。
今の気分にはちょうどいい。

すっきりと飲める。
ジン、レモンジュース、砂糖を入れてシェーク。
それをタンブラーに注いでソーダでアップ。
淀みなく完成させる腕は一級品といえるだろう。
味も自分のイメージするものだった。
そして求めている味だった。
さっぱりすっきり飲みたかったからちょうどよかった。

それからダラダラと1時間ほど飲むと1人の客がやってきた。
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| CELLULAR | 21:56 | comments(4) | trackbacks(0) |
call 4
おれが連れてこられたのは廃屋だった。
事件があったのは新聞で読んでいたし、その人物の葬儀にも出席した。
中退した大学のときに何故か気に入られて色々と巻き込んでくれた先輩だった。
酒が好きで、ドラッグと弱者に対する暴力がとにかく嫌いだった。
目の前で女を引っぱたいた見知らぬ男にいきなり飛び膝を繰り出すような人だった。
味方も多いが敵も多くて、渋谷を1人で歩くのが当時躊躇われたこともあった。
敵対する連中に見つかればボコボコにされかねない。だから、先輩と一緒にいるときだけ渋谷に出ることが出来た。
それでも喧嘩に巻き込まれることは日常茶飯事で、場数を踏むことでいつの間にか鍛えられた。
幸か不幸かおかげで今は喧嘩で負けることがなくなった。
ただ渋谷を歩くのは今でも苦手だった。

「死ぬまで絶好調」

それが口癖だった。

死んでしまえば絶好調でもなんでもない。
だから死ぬまでは絶好調でいくという信念の持ち主だった。
死んだらどうなのか聞いてみたくなったが、きっと答えは返ってこないだろう。

廃屋に入ると背中に悪寒が張り付いた。
葬儀の時に感じたあの感覚だ。
これは前にも何度か似たような感じを受けたことがある。

あれは不自然な事故現場だった。
横浜で男の死体が見つかった。
ドアのガラスが割れていて、その割れたガラスで首を切った男がベッドの上で死んでいたという事件だ。
問題なのはドアのガラスで切ったはずなのに一滴も血が床に残っていなかったことだった。
それで呼び出されたが、結局なにもわからなかった。

何度も使われるようになったから信用されているのか、どんな状況で死んでいたのかなんていう情報は流してくれるようになった。
おかげでイメージを描きやすくなった分接続は簡単になった気がする。

その場所もここと似たような感じだった。
だから、何も出来ないと思った。
それでもいつものように自分の携帯に電話をする。
自分の携帯の番号を自分の携帯から電話する。

いつもならこの手の現場では通知音が鳴る。
だが、今日は鳴らない。
思ったとおりだった。

「ダメです。前にもあったケースと同じです」
「そうか。わかった。じゃあ、おまえは帰っていい」
「役に立てなくてすみません」

吉野警部補は手をさっと振ると背を向けて他の刑事達と話し始めた。
どうやらここから先は不要になったようだ。

日はとっぷりと暮れていた。
会社に電話をすると今日は直帰でかまわないと言われた。

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| CELLULAR | 23:50 | comments(3) | trackbacks(0) |
call 3
世界が変わる瞬間というものがあるとしたら、それはあの日冗談で自分の携帯の電話に自分の携帯から電話をかけたときだろう。

今はいない存在に電話が繋がった。
フィクションのような話しだが事実だ。
ただ、あの日以来人が死んだ現場には巡り合わせていないから偶然だったのかどうかまではわからない。

この日まではそれを知る術がなかった。
そして、この日それが確証に変わった。

社長命令で高層マンションの一室に向かうように指示され、マンションのエントランスに着いた途端厳つい顔の男が数人現れた。
どう見ても堅気ではない。
全身から特殊な雰囲気を放っている。

「おまえが神嶌が言っていたやつか」
神嶌は社長の名字だ。
「社長をご存じなんですか?」
つとめて冷静に聞き返した。
「まあな。じゃあ早速やって貰おうか」
「はい。現場は1507号室でいいですよね?」
「ああ。ついてこい」
一緒にいた先輩に「おまえはここで待機だ。篠崎おまえも残れ」と言って1人の男を残して、エントランスでエレベーターを待つ。
軽快な着信メロディーが鳴った。
一番偉そうにしている男が携帯を取り出しマナーモードに切り替えた。
程なくしてエレベーターに乗り込んだ。

わりと大きなエレベーターのはずなのに妙に息苦しい。
3人のスーツ姿の男達から無駄に発せられる圧力のようなもののせいかもしれない。
いいことが起きないだろうという予感は彼らを見ていた時からあったが、「KEEP OUT」の文字のテープが張り巡らされているマンションの一室へ案内されたとき確信へと変わった。

「じゃあ、頼むは」
室内に入ると男はそう言った。
「な、何をするんですか?」
「何って、聞いてないのか? あれだよ。電話」
「電話?」
イライラし始めたのか厳つい顔の男はぎらつく眼光でおれを睨んだ。
「……」
「あれだ。自分の携帯に電話するやつだ」

合点がいったが、本当に上手くいくだろうか。
だけど、ここで何もしないとこの部屋で新たな死体が生まれそうな雰囲気がある。
とりあえず、状況からして彼らは警察で、この部屋は事故あるいは事件現場だろう。
部屋に血痕らしきものはない。
だとすると、絞殺あたりだろうか。
妙に随分と冷静な自分がいることに気がついた。

仮にここで何も出来なくても殺されることはない。
相手がヤクザであっても殺されないだろう。八つ当たりで殴られても死ぬことはない。
なぜなら彼らがおれを疑っている雰囲気があるからだ。
半信半疑で金を取られたとしても、社長はある程度身元が割れているから金を取り返すことはできるし、もしくは更に巻き上げることもできる。

彼らが刑事である以上金が絡んでいるとは思えない。
ならばこれは……論より証拠だ。

自分の携帯に電話をかけた。

冗談のようだが少しノイズ混じりのコール音が耳に届く。
程なくして相手が電話に出た。
老いた男の声だった。

「出ますか?」
「どうやって死んでいたか聞いてみろ」
逆らっても意味がないし、相手が死んでいることは間違いがないようだ。

いくら死人だからと言って「どうやって死んでいましたか?」と聞くのも憚られたので「最期に何を見ましたか?」と尋ねてみた。まあ、大きく変わらないが、直接的な聞き方よりはマシというものだろう。

回答は天井だった。
それを伝えると刑事は少し考え込むようにして「死ぬときに誰かが側にいたかを聞け」と言う。いっそのこと自分で聞けばいいのにと思うが、同じ立場なら絶対に電話を替わりたくなど無いから、刑事の言うことに従った。

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| CELLULAR | 00:42 | comments(0) | trackbacks(0) |
call 2
携帯を持たない大学生が少なくなったこのご時世に、当然のようにオレも携帯を持っていた。
バイト代で携帯代を捻出しているのが実状で、人数あわせの合コンか、飲み会以外ほとんどかかってくることのない携帯電話なんか持っているだけ意味がない。
なにしろ金ばかり飛んでゆく。
高校までが親の金で大学は一切が自分の金だった。
生活費まで自分で工面しなくてはならず、大学にいる理由がほとんど見当たらなかった。
大学に入ったときから始めた大手の引越業者のバイトは、講義を休まなければならず本末転倒になりかけて辞めた。

色々とバイトをして結局小さな引越業者でこちらの融通を聞いてくれる今の会社に落ち着いたのは、2年生を2回目に突入した春のことだった。

そのころちょうど都市伝説で「自分の携帯に自分の携帯から電話から電話がかかってきて、それに出ると死ぬ」とかいうのが、うちのキャンパスで流行った。
ホラー映画の受け売りだろう。

ある5月の晴れた日のことだった。
仕事の依頼先にたどり着いたが、相手が留守で先輩と会話しながら待っていたときだった。
「先輩知ってます? 自分に自分の携帯から電話がかかってきたら死ぬって」
「あ? それあれだろ。ホラー映画だろ?」
「いや、自分のところの大学で、そんな噂があるんですよ」
「最近のガキは影響されやすいからな。で、おまえも信じてるの? だったらよ。自分に自分で電話してみ」
ちょっと気持ち悪かったが、自分に自分で電話をしてみる。通話は出来なかった。
「大体通話できるわけないんだよ」
「そうっすよねー……あ、あれ。あの人そうじゃないっすかね?」
女性が早足で近づいてきている。
「お、割といい女だな」

彼女は息を切らせながら遅れたことを詫びた。
先輩がいつものように手短に作業手順の説明をして、引越が始まった。
そして事件は起こった。

部屋に入り引越をしていると、突然携帯が鳴り出した。
バイブにしていたはずなのに、着メロが流れ出したので最初は自分の携帯だとは思わなかったが、音が自分に近すぎることに気がついて慌てて携帯を取り出した。
ディスプレイに表示された番号は自分ものだった。

さすがに焦ったが、出ないことには鳴りやまないと踏んで、出てみた。
無言電話か何も聞こえなかった。
申し訳ない素振りで、頭を下げて慌てて外に出ると切れた。
電源をオフにして部屋に戻ると再び鳴り出した。
電源を切ったにもかかわらず鳴り出した携帯をじっと見ると、相変わらず自分の番号が表示されている。

「すみません」と一度頭を下げその場で通話した。

「もしもし?」
「セイコ?」
「違います」
「セイコ?」

間違い電話だ。
通話を終了しようとして電源ボタンに指をかけようとしたときに、思い当たって携帯電話をこの家の引越を依頼してきたオレよりも少し年上の女性に携帯を差し出した。

「たぶんあなた宛です」
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| CELLULAR | 21:50 | comments(3) | trackbacks(0) |
call 1
JUGEMテーマ:小説/詩


1月の快晴の下でオレは空に向かって紫煙を吐き出した。
空には雲がほとんどなく、勢いよく流れる煙がオレの視界で飛行機雲のように見えた。
背中に会社のロゴの入ったつなぎはこの日の空と同じブルーだったが、随分と使い込んだためか、やや煤けた色に変わっていて気持ちを重くさせる。

10分前に買った缶コーヒーは、はじめから冷たいものだったかのように、外気程度の温度になっていてなおさら気分を重くさせた。
まったく飲む気にはなれなかったが、せっかく買ったものだからと口を付けて、あまりの冷たさに身震いした。気分がどんどん滅入ってくる。

こうやって外でタバコを吸っているのも会社の車は客が乗ることも前提になっているので、禁煙仕様になっていて灰皿が撤去されているからだ。
嫌煙家のパートナーは車の中で暖まっていた。
経費節減で自動車のアイドリングは止めるように言われているが、まるで無視をしている。地球環境よりも自分の快楽を優先させる人物で、好きにはなれなかったが、それを口にしたり、態度に表すほどオレは子供でもなかった。

「おーい」

築20年程度のアパートの階段部分からオレは手招きされた。
マイルドセブンエクストラライトの吸い殻を飲みかけの缶に捨て乗ってきたトラックの脇に缶を置きアパートに歩を進める。
一緒に来ている男は車の中で暖まっている。
手招きをした男が用事があるのは、自分だけだということは十分にわかっていることだったから気にもとめなかった。

2階の奥の角部屋に手招きした男が立っていた。
そこまで歩いて行くと、いつもの見慣れたものを目にする。黄色地に黒文字で「KEEP OUT」と書かれているテープが張り巡らされていた。
仕事用の軍手ではなく男から渡された手袋をはめ、靴後が残らないようにカバーをつけて、テープを潜り室内に入る。
すでに現場検証は済んでいる。
だから、靴下で上がり込んでもいいのだが、念のためということらしい。疑念の余地を挟まないようにするためだった。

疑念の余地というかオレを頼る時点でおかしな話しなのだが、これも会社の運営に直結しているのだから仕方のない話しだ。

グリーンのラグに深い赤の模様。
これが血であることは疑いようのない事実で、その模様の大きさから失血死をしたのは想像に難くない。
ここは3日ほど前までこの部屋は完全に封鎖されていた。
誰がどう考えても殺人事件の現場だった。
犯人は未だに捕まっていない。
目撃証言もない。
唯一隣の住人が深夜に大きな物音を聞いたというのが、今公開されている情報だった。

正面から複数回刺されているという情報だった。
それでオレが呼ばれた。
まあ、後ろから刺されていても呼ばれるのだが。

死にゆくものに見られるのは誰でも怖い。
まして自分が殺している相手ならなおさらだ。
そして、抵抗されることを考慮すれば後ろから斬りつけるのが常套手段だろう。

今回は正面から複数回刺している。
それは相手に対する激しい憎悪、快楽殺人のどちらかだろう。
あるいは追い込まれたことによる精神的圧迫に耐えきれず確実に死ぬまで刺した可能性も否定できないが、ご遺体は女性であることから、その線ははずすことにした。
そうすると怨恨か快楽殺人だろう。ただ、日本では後者の可能性は限りなく低いから怨恨だろう。
と、言ったところで、それらの犯人の心理状況や、動機なんかはオレに関係のないことだと気がついて、携帯を取り出した。

090****……

よく知っている番号をプッシュする。
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| CELLULAR | 12:23 | comments(2) | trackbacks(0) |