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ほら話「左側」

 友達の友達の話。
その人は霊感が強い方ではないらしいのだが、怪談やその手のテレビを見聞きすると本物が絡んでいる場合サインがあるそうだ。
この手の番組は大抵悪霊関係なので良くないものが近くにいるのだと感じるときはサインが必ずあるみたいでそれを感じると「ああ、これは本物だなぁ」と思うそうだ。

実際にそのサインがあるだけで見えたり聞こえたりするようなことはない。
ただ、サインがあるだけなのだという。
再現話のドラマでもそれはあるそうだ。

例えば感動するような亡くなったお母さんの霊が助けてくれたとか、作り話の時はどんなに怖くてもそれは感じないが、大して怖くなくても、本物が関与していると左肩が重くなり痛みがでるそうだ。
重くなるので肩こりが悪化したような印象だという。
元々肩こりが酷い人物なので座っている姿勢が悪いのかな?と最初は思っていたそうだが、どんな体制になっても痛むのは左肩ばかりなのでどうやら姿勢のせいではないと気がついたのだという。

なので、サインだと気がついた。
これは何かあるときに痛みが出るのだと。
左肩越しに月を見るのは不幸になるというジンクスが西洋にはあるので、左肩に負荷がかかるのは悪い霊の象徴ではないかと思ったそうだ。
不幸と悪霊を一緒にしてはいけないが霊感のない人間からすれば似たようなものなのだろう。

更に彼は大変に験を担ぐタイプなので子供の頃に知り得たその左肩越しの話を聞いてからは、極力左肩越しに振り返ることがなかった。
すでに右から振り返ることが癖になっていた。
子供の頃からなので本人も今となっては無自覚に右から振り返るのが普通になっていたという。
たまに姿勢が左から振り返る方が自然な場合があるときに限って左から振り返るが基本的には右から振り返っていた。

夏のある日録画した怪奇現象の再現ドラマを昼間に見ていたそうだ。夜に飲み会があるのでそれまでの時間つぶしだった。適当に携帯をいじりながら流し見をしていた。
いつものように怖い話が続き亡くなったおばあさんだかお母さんだかが助けてくれる話になった。
普通この手の話なら肩は痛くならないはずなのだが、その日見たものの中では一番重く感じた。
だから、今までの悪霊を感じていたというのは勘違いではないかと思った。
ドラマはめでたしめでたしのような話でハッピーエンドを迎えた。

暫く左肩の重みはとれなかったが、飲み会があるので出かけて夜遅くに帰宅した。
左肩の重みはすっかりなくなり友人との飲み会でそんなことも忘れていた。
ずいぶんと酔った。自分の呼気に含まれる酒の香りでもう一度酔いそうだった。
コンビニで翌日の朝食と飲み物を少し買ってマンションについた。

同じマンションに6年住んでいる。入居したときは新築だった。

最近管理人の手抜きなのか廊下が汚れていたり、廊下の電灯が切れてたりしていることがあり、この日はエントランスに入ると電灯が明滅していた。
オートロックの鍵穴に鍵を差し込み解錠すると何事もなかったかのように開いた。不思議な話だが何故か開けてはいけない気持ちになった。
開いた自動ドアから流れてきた空気は外に比べて少し冷たい気がした。

エレベーターホールで上矢印のボタンを押す。
左肩が重くだるい。痛みはないのでストレッチのようにグルグルと回してみた。
少しはマシになったが違和感は変わらずに左肩にあった。

地下からエレベーターは上がってきた。
小さく電子音を立てて到着を知らせる音が鳴った。
ゴトンと重たい音がしてエレベーターのドアが開く。
中には誰もいなかった。
コンビニの袋を持った右手でそのまま5ボタンを押す。
「閉」のボタンを数回押した。
反応よくすぐにドアは閉まった。
そこである違和感に気づく。B1のボタンがない、
そうだ。この建物に地下階はない。なのに今、地下から上がってきたように見えたのは何故だろう。
酔っているのか?そう思った。

11階建てのマンションに着いているエレベーターだからそれほど早くはないが、遅くもない。
階層が上がる度に肩の違和感は増して行く。目を瞑って左肩を回す。
そろそろつく頃だと思い目を開くと4階と5階の間を通過するところだった。
そのとき大きく息をのんだ。
階層の間は暗い闇が広がっているため鏡のようになる。
そのエレベーターの窓ガラスを見たときに自分の左肩越しに一瞬だがぼさぼさの長い髪の女が映っていた。
いや、たぶん女だろう。女だったと思う。ちゃんと顔は見られなかったのだが女だと思った。
5階につくとエレベーターのドアが開いた。
早く降りたいが降りるとそれも一緒に降りてきそうで怖かった。
しかし、このままエレベーターに乗ったままではどうなるかわからない。地下に連れて行かれるかもしれない。

恐怖に駆られて閉まる直前に飛び出した。
廊下の電灯は所々消えている。気のせいかもしれないが暗がりには何かが息を潜めているような気がした。
夏だというのに鳥肌が立つように寒い。
背後で扉が閉まりエレベーターが下に動き出す。
その気配を感じて左側から振り返りそうになったときあり得ないほどの力で左肩を握られたような痛みが走った。思わず目を瞑る。

目を開けたときには既にエレベーターは下に降りていた。
1階で止まった。地下から来たのは錯覚だったのだろうか。
左肩は痛むが自分の部屋に早く帰り着きたい。

その思いだけで部屋の前にたどり着いた。
マンションは自体がL字の建物で彼の部屋は一番奥だった。
L字の折れているところを中心がエントランスで左右に伸びている。
一番奥の部屋のドアはどん詰まりのような位置にあり他の部屋の扉に対して直角の位置にある。
部屋の前の電灯が消えていた。
鍵穴も見るのは難しいが6年も住んでいたらなんとなく位置はわかる。
慌てているのかなかなか入らない。
闇の中で何かが居るような気がするので焦りだけが募ってゆく。
ガチャンという音を立てて鍵が開いた。
ドアノブは右手で開けるような位置にあるからコンビニの袋を左手に持ち替えて右手で扉を開いた。

ガチャン

背後で大きな音がした。
恐怖に支配されている彼にとってはどれほどのプレッシャーだっただろう。
思わず彼は振り返ってしまった。

左肩越しに。

右手でドアノブを持っている都合上そう振り向かざるを得なかった。
そしてそこにはそれがいた。

エレベーターの中で見かけたぼさぼさの髪の女。
髪の間から見える濁った瞳は焦点が合っていない。
くすんだ皮膚も生きている人のそれとはまるで違う。
もうダメだと思った。
隣の住人がこっちを怪訝そうに見ていることに気がついた。
彼はそのとき隣に誰が住んでいるのかを初めて知った。
隣の住人は女だったから視線の先が自分に向けられていることを不審に思ったのだろう。
実際には隣人の先にいる形容しがたい何かだった。
引きつった顔で自分の方を見ている人物を不審に思わないわけはない。
隣の住人に視線が動いたときそれも一緒に動いた。

そして、そのまま隣の部屋に入っていった。
それはまるで煙が風に流されるようにふわりとするりと動き隣の部屋に入っていった。
彼は隣の住人に何か言おうとしたが、隣の住人は彼を気味の悪い隣人ととらえたらしく足早にエレベーターの前に移動した。

彼はなにも言えずに自室に入り扉を閉めた。
そのままトイレに行くとその日口にしたもの全てを吐き出した。
正直助かったという思いと隣人に何かが起こるのではないかという不安からだった。

その日は一睡も出来なかった。
壁の向こうからやってくるのではないかと不安が心を締め付けた。
そして、隣人の身に何かが起こるのではないかという心苦しさからだった。
結果としては遅くに外出した隣人はその日は帰って来なかった。
翌日彼は不動産屋に行って即日入居可能な家を探した。
少しでも遠くに行こうと別の町の家を探した。
引っ越し先は程なく決まり彼はそのマンションを出ることになった。
家に帰るのは怖くてホテルに引っ越しの日まで泊まることにした。

それから友人に電話をしてことの顛末を全て話した。

彼は無事に引っ越しをすることが出来たのだが、引っ越してから彼の消息が不明になった。
引っ越し荷物もろくに解かれないまま彼はいなくなった。
部屋には無数の長い女の髪の毛が落ちていた。

あの日肩が痛くなったドラマの内容はいわく付きの物件に越したが祖母の霊によって助かったという話だった。
彼が反応したのはその悪霊で悪霊が彼を呼んだのだろうか。
そして、彼の祖父母は健在で彼を救う霊は現れなかったということなのだろうか。

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