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もすこみゅーるだんでぃー

だらだら垂れ流しています
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彼の思い彼女の思い
栗色の少年はわざとらしく大きなため息をひとつ漏らした。
隣を歩いている少年はここ数日同じことの繰り返しで飽き飽きしている言葉をそれでも口にした。
「どうした?」
「あーやっぱり今年もチョコ、ゼロの予感」
「いいじゃねえか。別にチョコなんて」
バレンタインデーだと言うのに男二人で歩いていた。
そしてチョコはもらえていない。
「バカ言え。バレンタインのチョコは古来より御チョコ様と呼ばれている格式高く霊験あらたかで、食べると寿命が10年単位で延びるという一品だぞ」
「バカはおまえだ。タカ」
「酷いなー。サトシはいつも冷たてえな」
明るい栗色の髪の毛で左右の耳に5ずつピアスをしている少年はグレーのカラーコンタクトの瞳で、睨み付けながら隣を歩く少年にそう言った。

サトシとよばれた少年は隣の派手な少年とは対照的にどこにでもいるような風貌だった。
端正とまではいかないがそれなりに整った顔立ちで、髪型もありがちなものだから若者が沢山いる場所なら探すのに苦労しそうだった。
服装だけならお互いの関係は逆転しそうなものだが、インテリヤクザとチンピラと言えば立場は逆転していてもおかしくはない。

サトシは普通であることを望んだ。
ただ、普通であることが良かった。
突出すれば叩かれる。その煩わしさを避けて通りたかった。
自分の限界がわかっているから無理をしない。
無理をしても辛いだけだ。
だから普通であることを選ぶようにした。
その普通の中でタカは異質だが、あえてそれを切り捨てるほど強くは普通を望んでもいなかった。

いわゆる一般人からするとタカのファッションは近寄りがたい雰囲気のあるものだった。
とはいえ、サトシはタカと幼なじみで生まれてこの方怖いと感じたことはない。
今でこそ体格は似たり寄ったりだが、タカは不思議とサトシのことを大きく感じている。
子供の頃の体格の差がすり込まれているからかもしれない。
それが災いしているのかタカは虚勢を張るために奇行とも思われるような特有のファッションに身を包んでいる。
サトシはこの奇抜なファッションに身を包まなければアイデンティティを保てないタカを少し不憫に思っていた。
そして、いつまでも自分に叶わないと思い込んでいてもらえればよかった。
実際のところ喧嘩しても勝てるだろうが、こちらも無事では済まない。
痛い思いをしてまで検証する必要のないだろう。
それに負けたら何故かタカが傷つきそうだと思っている。
だから虚勢でもタカの前では強くいる必要があった。
こういうことを考える度にサトシはタカに対する友情が正しい形をしているか悩んでしまうところがあった。

「あれ? 棚橋じゃね? おーい。たなはしー」
目に付いた知り合いに無条件に声をかけるようにタカは見た目に反して子供過ぎるところがある。
サトシは自分以外の連中からカモにされているのではないかと不安になる。

棚橋と呼ばれたのはすらりとした少女だった。
天は二物も三物も与えたのではないかと思うほど彼女は完璧に思えた。
見た目もさることながら学年で5位以下に落ちたことのない頭脳、芸術面でも才能を発揮し、料理の腕もそこら辺のカリスマ主婦なら裸足で逃げ出すほどだという。
まさしく才色兼備だ。

最大の欠点である協調性の欠落を除いては。

才色兼備には性格を表現する部分がない。
それは重大な問題だとサトシは棚橋を呼ばれた少女を見るといつも思っていた。

ツカツカと少女はタカの前に歩を進めパンと音がするくらいの勢いでタカの頭を掌で叩いた。
「なに私の個人情報を漏洩してるのかな?」
「個人情報って言ったって名字だけじゃん」
「もし、私が今日からストーカー被害にあったら、あんたの人生に暗い影を落とすような結末になったとしても全く問題ないと言えるの?」
「そんなことないだろ」
「絶対に? 絶対にないと言えるの? 私こんなに美人なんだけど」

自分で言いやがったとサトシは思ったが、事実だから仕方がないとも思った。
謙遜しても認めても美人は損をする。特に性格に難がある場合はそのことが顕著になる。

「おまえの性格知ったらストーカーだってストーキングしたこと後悔するだろ」
タカはおくびれもせずに笑いながらそう言った。
「どの口がそれを言うの?」
そう言いながら少女はタカの下唇の下の辺りを強くつまみ上げた。
「ひてててて。こめんこめん」
情けない声を上げてタカは謝った。
少女の腕を振り払おうと思えば簡単に振り払えた。
それをしなかったのは自分の力が強いことをタカが理解していたからだった。
「そのくらいにしておかないと指が涎まみれになるぞ」
「それは困るわ」
サトシの言葉に反応して少女は指を離した。
「いてて」
タカは強く握られた場所をさすっていた。
タカは見た目から想像が付かないほど女性に優しかった。
男に対しては動けなくなるほど殴り倒すのに、こと女が相手だとまるで無抵抗主義者のように何もしない。
「女は絶対に殴らない」という頑ななまでの男らしい一面をタカは持っていた。
タカは自分から喧嘩を売るようなことはしない。
タカは残念な方向に道を踏み外した好青年と言えるのかもしれない。

どこからか流行のJ-POPが流れてきた。
タカはズボンからスマートフォンを取り出すと電話に出た。
「もっしー。あーうん。大丈夫だよ……マジで? オッケー。じゃあ今から行くわ。そういやさ」
タカは途中一度サトシに目を向けたがすぐに電話に戻り片手を上げて二人の前から立ち去った。
サトシは少し苦い表情をしてそれを見送った。
「変な気を遣いやがって」とサトシは心の中でタカに悪態をつく。
サトシの心は少し重くなった。

サトシは無言で歩き出した。
その横を少女が歩く。
サトシはこのときばかりは帰り道が同じ方向であることを呪った。
無言を選んだのもその無言に耐えかねたのもサトシの方だった。
「うまくいってんのか?」
「心配される理由が見あたらないくらいに」
「そうか」
再び無言が辺りを支配した。
サトシは少し前に少女に告白して玉砕している。

「まだ私のこと好きなんだ」
少女は残酷な一言を少年に向けて言い放った。
「ああ」
サトシはなんの躊躇いもなくそう答える。
「そう。大変ね」
少女は自分には関係のないことのようにそう言った。
聞いておいてなんという言いぐさかとも思ったが仕方がないとも思った。

少女は援助交際をしていると噂があった。
さえないおっさんと腕を組んで歩いているのを目撃したという情報があった。
元々少女は敵が多いからそういう噂が立てられても仕方がなかった。
何度かそういうことがあったが事実無根であるといつの間にか噂は消えてなくなっていた。
それには彼女の与り知らないところで「棚橋盟友会」なる集団が動いているのだが、それは別の話であるのでいつか語ることにする。

そんな得体の知れない集団が何かしたかはどうでもいいことだし、もちろんサトシは噂をいちいち信じてはいなかった。
少女こと棚橋メイがやるならもっとわかりやすい方法に違いないからだ。
影に隠れるようなことはいちいちしない。
だから援助交際などあり得なかった。自分の目で三十代近いおっさんと腕を組んで歩いているのを見るまでは。

だが、そこにあったのは好きな人にしか見せない特有の表情であり、援助交際でないが自分の中にある恋心が実を結ばないものだと確信した瞬間でもあった。
援助交際ではないが明らかに年上の男と一緒にいた。それも男に付きまとっているのではないかと思うくらいに愛情のバランスは棚橋メイの方が大きいように見えた。

その直後に二人が別れたのを見てサトシは別の道を選んで帰ろうとした。
自分の中の動揺が隠しきれそうにもなかったからだ。
しかし、一瞬だけメイを見ようと彼女を見た時に目が合った。
顔を背けようとしたがそれはそれで酷く不自然に思えて極力自然を装い今気がついたという顔で手を挙げた。
「よう」
「見てたんでしょ?」
どう切り返そうか考えて時間がかかれば相手のペースにはまるのが見えていたし、嘘をついてもばれるだろうから正直に話をすることにした。
「ああ。見た」
「そう」
「彼氏か?」
自ら止め刺しに行くような行為だった。
「そうよ」
改めて本人から言われると胸の奥にざっくりとえぐられるような痛みがあり、そこが悲鳴を上げているのがわかる。
「なんであんなおっさんを」
「たまたま年が離れているだけだし、言われるほどおっさんでもないわ」
「まわりが普通には見ないぞ」
「関係ないわ。私の人生を私が生きるのになんの問題があるの」
「社会一般の通念の話だろ。そんなのわかるだろ」
「わかるけど、それがなに? 好きになったのがただの30近い男で職業がエロ漫画家なだけよ」
開き直りや逆ギレっぽくもあるがメイの反論に返す言葉がないのも事実だった。
「は? エロ漫画家!? 30近いってのだってどうかと思うけど職業が問題だろ」
とてもエロ漫画家には見えなかった。
180センチを超えるであろう身長と喧嘩したら負けそうなほどがっちりとした体つきだった。

「些末なことね。18歳のアラブの石油王の息子ならサトシは諦められたの?」
「それは……」
「結局サトシは相手が間違えているということで論破しようとしているのだけど、それは意味がないことよ。恋愛は異常な精神状態なのだから常に正しくないのよ。正しい恋愛があるならそれこそ異常なことよ」
勝ち誇るでもなく、熱を帯びたように浮かされたようになるわけでもなく、ただ淡々とそう言った。
サトシはメイに対して昔から芯が強くて揺るがなかった印象をもっていた。
昔と言っても小学校の中学年の頃だから10年も経過してはいないのだが。
当時から不思議な魅力と人を敵に回すところは変わっていない。

明確に好きだったわけではないが気になる存在ではあった。
好きだと明確に気がついたのはこのときだった。

「じゃあ、おれも異常なんだろうな。おまえのことを誰かに渡したくない」

既にあの男が彼氏だと宣言されているのに、そんなことを口走ったことに動揺した。
だが、言わずにはいられなかった。
サトシは自分にしては珍しく歯止めが利かなくなっている自分を感じていた。
「おれは確かに自分の金で生活できていない。でも、負けていないと思う」
身長や体格は負けていたがトータル的なルックスなら勝っている。
身長も175センチはいっている。割と細身だが貧弱ではない。
若いしメイの隣に並んでも遜色がない自信はある。
権力や金銭的な事情を持ち出されたら負けるがそれ以外なら勝てる自信があった。
喧嘩になれば若さでなんとかするつもりだった。

「何に勝って何に負けてもセイちゃん以外はいらいない」
「何がそんなにいいんだよ」
サトシは思わず声を荒げる。
それに臆することなくメイは淡々と言葉を続ける。
「私の何がいいの?」
「え?」
「私じゃないとダメなんでしょ?」
「え、ああ。そうだよ」
言葉の意味をサトシは掴みかねていた。

「じゃあ、私がセイちゃんじゃないとダメなのわかるんじゃないの?」
「それとこれとは別だろ」
サトシはふてくされたように言葉を出した。
「わかってるはずでしょ。私を諦めるように言っても私じゃないとダメだとサトシはいうのでしょ。私が他にいい人が現れるなんて言ってもサトシは想像できないでしょ。確かに私よりもいい人なんて早々見つからないと思うけど」
最後の言葉は余計だが事実今の気持ちが萎えることはないだろうと思った。

「私はサトシの思いを止める術を知らないの。だから、あなたが好きでいるのを辞めるまで私はその気持ちを放置するより他がないの」
「もうチャンスはないのか?」
「それはすなわち私が不幸になることを望んでいると受け取っていいのかしら?」
「そういう訳じゃないけど」
「じゃあ、どういう訳なの?」
「俺があいつよりいい男になって振り向かせるって意味だよ」
「それは無理ね。確かにセイちゃんよりもいい男になることはあるかもしれないけど、セイちゃん以外はいらない私に超えるとか以下とかは一切意味がないの」
サトシにとっては勝ち目がゼロと通告されたようなものだった。
「それでも俺はおまえのことを好きでいてもいいというのか?残酷だな」
「あなたにとっては残酷でも私にはなんの感慨もないわ」
「酷いな。でも、そのとおりだろうし、それでいいんだと思うよ」

メイは小さく笑った。

「なんだよ」
「物わかりがいい割にあきらめが悪いのはどうしてかなと思って」
「そりゃ……」
「相手がいい女だからだろ」と続けようとして飲み込んだ。
「そりゃの後はなに?」
「まあ、思考と感情は必ずしも結びつかないって話だろ」
「……そう、まあいいわ」
見透かしているのだろうと思ったがそれを口にして真意を当てられるのは癪に障るので黙っていた。
それはそれで見透かされていそうなのだが。

グーとメイのおなかが鳴った。
メイは鞄を漁ると茶色の包み紙に覆われたチョコレートを取り出して小さくそれを割ってそれを口に放り込んだ。
その動作を3回ほど繰り返したところで、少し大きく板チョコを割りサトシに差し出した。
「はい」
「え?」
「いらない? 物ほしそうにしていたから」
「ああ、もらうよ」
これでも寿命が10年延びるのだろうか。
まったく意味が込められていないチョコレートだとしても好きな子からのものなら効果はありそうだ。
詳細は伏せてタカには一つもらえたと言ってみようと思った。
悔しがるタカの顔を思い浮かべてサトシは笑った。
メイはそれを怪訝そうにそれから優しい目でそれを見ていた。

という話をバレンタインデーに上げようと思ったらこんなことに。

JUGEMテーマ:小説/詩

| レンアイ | 01:03 | comments(1) | - |
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あー、これ好きな感じです。
棚橋可愛いよ棚橋(;´Д`)ハァハァ
| れいら | 2012/03/10 1:16 PM |