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もすこみゅーるだんでぃー

だらだら垂れ流しています
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思いの淵
壊れかけたブラインドから夕日が差し込んでいる。
布団の中でもぞもぞとメイは動いていた。
下着を身につけているのだろう。
俺はといえば素っ裸で腹ぐらいまで布団を掛けたままの姿勢でたばこを吸っていた。
まるでドラマで情事の後の男がするように。

「やめなさい」

冗談半分でメイは俺の股間にキスをしてきた。

「くすぐったい?」
布団の中からくぐもったような声が聞こえてきた。
「そうじゃない。勃つだろ」
「じゃあ、口でしてあげる」
「さっき出たばかりだから。こら」
既に口で始めようとしていた。
布団の中に両手を突っ込んでメイの脇の下に差し込み引きずり出す。
わざと止めていないフロントホックのブラがだらしなく肩からぶら下がっている。
その間から見える胸はお世辞にも大きいとは言えない。
「毎日揉んでもらって大きくするから平気」と言って毎日揉まされるが大きくなる気配はない。
それでも形がいいから時々参考にしそうになるが、さすがにそれはできない。

布団から引きずり出されたメイは脇を持ち上げられた猫のようにも見える。
重さをどこかに忘れてきたように思えるほどメイの体は軽かった。
細くしなやかな肢体だが夕日の影響で女性らしい陰影を濃くする。
そこはかとないエロティシズムを感じずにはいられないが「にゃー」と言って飛びついてから全てが後和讃になる。
そして、いくら軽いとは言え人ひとりの体重を踏ん張りがきかない状況では受け止めきない。
俺は強かに後頭部をベッドの角にぶつけた。
180センチを越える身長と辞めて久しいがラグビーで鍛えた体……といっても、今は無残なものだが。ただ、160センチちょっと越えるくらいのメイを受け止められなかったことにどこかショックを受けていたのは事実だった。

「いってー。危ないだ」
「危ないだろ」とは言わせてもらえなかった。
メイの少し湿り気のある唇が生々しい感触を持って俺の唇をふさぐ。
ちらっとだけ舌を滑り込ませてすぐに唇から離れて笑う。
いたずら者の猫が笑うとこんな感じだろう。そんな笑顔だった。

「間接フェ○チオ」

「はー」とうんざりしながら息を吐き出している間にメイは体を離しベッドから降りる。
雑にブラを止めパンツの中におしりのあまり肉を納める。
下半身デブというがそうでもないと思う。
女の子のコンプレックスはわからない。
俺は頭をさすりながら体を引き起こして着替えているメイを見ながら壁に背を預けた。

何かをハミングしながらブラウスの袖に腕を通しボタンを留めていく。
その姿を見る度罪悪感が胸にこみ上げてくる。

「なあ、いい加減やめないか。こんな関係」

鳩尾辺りまでボタンを留めた手が動きを止めて泣くような顔でこっちを見る。
そして勢いよく飛びついてきた。
「捨てないでー。もっとちゃんとご奉仕するから。終わった後もお口でお掃除するから。そのときちゃんと「お掃除させてください」って言うから。中出しもいいし、アナルも開発していいから。クンニされたら「らめええ」って言うから。イク時は大声で「イクッ」っていうし、中出されたら「熱い!」って言うから」
「いや、全部やらなくていいから」
「じゃあ、どうしたらいい?」
「どうもしなくていいよ」
「セイちゃんの描く漫画ってこんな女の子ばかりじゃない」と頬を膨らませながらメイはそう言った。
その顔が漫画のように滑稽で俺は吹き出した。
「いや、あれは仕事だから。俺はいたってノーマルだろ」
「セイちゃんが初めてで他の知らないからわからない」
なんだか罪悪感と気恥ずかしさで俺は奇妙な表情を浮かべたに違いない。
メイは再びベッドから降りてボタンを留め終えるとここら辺では有名な進学校のスカートを短めに調整して履いた。
リボンをしてブレザーを着ると普通の女子高生の完成だ。
ただ普通と言うには美人過ぎるのだが。
校則がうるさいと髪の毛は染めていない。肩胛骨まで伸びたさらさらとした黒髪が着替えの時に揺れていたシルエットがどこか昔見た心象風景のようで寂しくなった。

「じゃあ、帰るね。あ、そうだ。セイちゃん締切いつ?」
「来週の木曜日」
「じゃあ、今週末トーン張り手伝いに来ようか?」
「いや、あれを一緒に書くのはちょっとしたプレイのような気がするから止めてくれ」
「でも、それじゃあ週末一緒にいれないじゃない」
「そういう約束だっただろ……てか、本当に俺じゃなきゃダメなの?」
「うん。セイちゃん以外はいらいない」
力強く肯定して即決。メイはいつもそうだった。
目的のために手段を選ばないしたたかさも持っている。
「じゃあ、締切終わったら来るね」
俺の頬にお別れのキスをして部屋を出て行った。
きっと10分後にはメールが来て0時前におやすみの電話がかかってくるのだろう。

携帯を見ると剣崎さんから連絡が来ていた。
どうせ飲みの誘いだ。全く筆が進まないから飲みに出かけるか。

いつも使っている居酒屋に行くと剣崎さんはカウンターでビールを飲んでいた。
「お疲れ様です」
「よー犯罪者」
「剣崎さん。ちょっと」
「じゃあ。ロリコンか?」
「いい加減にしてください」
「冗談だよ」
「毎度それで入るのやめてもらえませんか」
「すまんすまん。別に羨ましいからやっかんでるわけじゃないよ?」
剣崎さんは面倒見は良いんだけど口の悪さと性格に難のあるところが玉に瑕だろう。
前に連れて行ってもらったバーで女性のバーテンダーと口喧嘩していたしなぁ。でも、あれは仲がいいんだと思えたからきっと彼女候補なんだろうな。
そんなことを思っていたら剣崎さんが勝手にオーダーを始めた。

「ビールでいいよな。けんちゃん。生とあと適当に料理見繕って」
「適当って賞味期限切れそうなもので出しますよ?」
「いいよ」
「まったく。はい。生。おまちどうさま」
そう言って店主のけんちゃんは俺に生ビールを出してくれた。
同い年とは思えない貫禄がけんちゃんにはある。これが一国一城の主というものだろうか。
「かんぱーい。っと、そういや締切は?」
喉を潤す間もなく剣崎さんは聞いてきた。そんなこと気にするなら呼ばなきゃ良いのに。
似たような業界にいるとそうなるのはわかるけど。
俺は生ビールを喉を鳴らして飲んだ。
「来週の木曜日です」
「描けてんのか? 今日が水曜日だから8日で大丈夫なのか」
「いや、一枚も」
「何ページ?」
「12ページです」
「大丈夫なのかよ」
「いやー。まずいですねえ。でも座っていてもなにも浮かばないので今日は飲んで明日から描きます」
「はー担当泣くぞ」
「毎度のことですから」
「編集として困るからちゃんと上げてやれよ」
「はは。剣崎さんの方はどうなんですか。毎日飲み歩いてるみたいですけど」
「俺はもう終わったからな。基本堅いところ向けだから原稿は確実に上がる」

けんちゃんが「とりあえず」と言って豆腐サラダのようなものを俺たちの前に置いた。
「これミョウガ? おれ苦手なんだよね」
「あれ? 剣崎さん苦手でしたっけ?」
けんちゃんが本当に意外そうな顔してそう言った。
「苦手だよ。全然食えない訳じゃないけどない方がいい」
「意外と偏食なんですね」
「嫌いなものが1つしかないのに偏食扱いかよ」
「いや、剣崎さんって美味いもののためなら食えないもの克服するタイプだろうなぁって思っていたから」
「大した偏見だな。まあ、納豆もニンニクも食べることができるようになったし、むしろ好きになったけどさ。まあミョウガはよけて食うから、早く次のもの出せよ」
「はいはい。じゃあミョウガ尽くしにしようかねえっと」
けんちゃんはそう言いながらカウンター越しのキッチンで料理を作り始めた。

料理と酒を十分に楽しんだ頃剣崎さんが思いがけない言葉を口にした。

「少年誌か青年誌に描きたいなら口添えするぞ」
あまり手を付けていなかった豆腐のサラダのミョウガも面倒になったのか除けることなく口にしながらそう言った。
他人の人生を背負い込むようなことはまずしない人にしては珍しい言葉だった。
嬉しかった。それでも俺は……
「いいですよ……もう、そっちの描き方忘れちゃいましたよ」
徳利を持って剣崎さんの飲みかけのおちょこに近づけた。
「そんなことないだろ。エロゲーだってエロをそぎ落として一般に売り出されるような時代だぞ」
「それとこれとは別の話ですよ」
「絵だけで描いたようなもんに価値なんかないだろ」
「エロ漫画はエロ漫画で必要なんですよ」
「本気で漫画を描けって言ってんだよ。びびるなよ」
「……疲れたんですよ。誰かに何かを期待されるのも期待するのも」
「違うだろ。おまえが期待して失望しているのは自分自身だろ。言わせんなよ。おまえは存分に他人に期待させるものを持ってるんだ。少なくとも期待してんだよ。俺は」
そう言って徳利を引ったくるように奪って自分のおちょこになみなみと注いだ。
追い詰めるようで持ち上げたり引き上げたり。
根がお人好しのくせに屈折しているから素直に表現できない。
けど時々出るストレートな言葉が愚直すぎて、こういうところが嫌いになれないところなんだよな。
長く付き合ってみないとわからないところだからなぁ。敵が多いんだろうな。

「それにメイちゃんのこと考えたらそろそろ潮時だろ」
「なんでメイのことが。関係ないじゃないですか。真面目にってことですか。俺はこれでもエロ漫画にプライドを持ってるんです」
「違うよ。メイちゃんがエロ漫画に反映される前に手を引けっていってんだよ。人間なんて身近にあるものが記憶にすり込まれちまうから反復するように見たり触れたりしたもんは気がつかないうちに出ちまうもんだろ。十代の女の子に背負わせるにはちょっと問題があるだろ」
「そんなこと……言われなくたってわかってますよ」
「仏頂面になるな。そんな反応するってことは危ないと思ってるんだろ」
的を射られすぎて反論さえできない。
剣崎さんは俺のおちょこに酒を注いだ。

「俺はおまえの人生を背負うことはできないし、付き合うつもりもない。それでも横にいるやつが転びそうなのに手を差し出さないほど鈍感にもなれない」
「すみません」
「謝るな。これは俺が勝手にやってることなんだから。こっちも転びそうなら手は離す」
「あー剣崎さんってそういうタイプですよね」
「わかってんな」
「そりゃ長いですから」

大学2年で足の靱帯断裂と骨折でラグビーは諦めた。
それからバカみたいに女と酒におぼれた。身長の高さと筋肉はそれなりに女子からの需要もあった。
半年もしないうちにそれは飽きた。そして金も尽きた。
同じ大学の先輩筋にあたるということで、何人かの先輩を経由して剣崎さんが紹介された。
小遣い稼ぎに趣味だった絵を生かしてバイトでイラストを描かせてくれたのは剣崎さんだった。

「イラストよりは漫画向きだな」の一言で俺は漫画家を目指すようになった。
いや、逃げ込める何かが欲しかったそれだけかもしれない。
簡単なアシスタント業務から入ってイロハを覚えた。
そして最初の作品で少年誌の入選した。
案外簡単なんだな。と思ったが結局大賞との違いの差を見せつけられて俺は萎縮した。
絵だけならと少年誌から同人誌へ移行して、そこから今の雑誌に拾われた。
ほとんど運だけでこの世界にいる。

逃げ込んだ先で更に逃げ出した。
本気になって裏切られるのは怖かった。
本気でラグビーに取り組んでいたときと同じように漫画に裏切られるのが怖かった。
努力だけでは超えられない才能という壁を恐れていた。
夢を語れず、浪費されるだけの取り替えの利く存在に身をやつしていた。
そんなものにファンが付くはずもなく、遠くない将来この仕事も辞めなければならなくなるだろう。
俺はいつでもスペアでしかない。そういう生き方を選んできた。
それでもこの世界から足を洗うことができないでいる。

俺が二十歳そこそこで知り合った剣崎さんとももう10年の付き合いになる。
もう30歳だというのにつぶしの利かない仕事を選んでいる。
両親からはいい加減に定職を見つけろと言われている。
エロ漫画を描いているとは言っていない。ただ、売れない漫画家で見せるような作品は書けていないというニートのような話をしていた。

積み重なった夢の瓦礫が手のつけようのないほど高くなっていた。
それをどうすることもできずに俺は立ちすくんでいる。

「兎に角1回エロ抜きで描いてみろよ。話はそれからだ」
「描きませんよ。俺にはもうそんな才能はないですから」
「才能のせいにしてんじゃねえよ。無骨でもなんでもいいだよ。届ける力を見せろ。その先は編集の仕事だろ。発信者に必要なのは届けようとする力でそいつを手伝うのが俺らなんだよ。編集信じろよ」
「自分を信じられないのになんで他人を信用できるんですか。だいたい剣崎さんは漫画の編集じゃないじゃないですか。わかるんですか?」
「わかるさ。編集じゃなくたってそんなもんは」
話が堂々巡りになりそうだった。
兎に角俺は自分に期待していなかった。
その期待さえしていない俺に期待していると剣崎さんは言う。
いつか剣崎さんが「おまえは俺に似てるんだよ。だから嫌いだけど放っておけない」と酷く酔いながら言っていたのを思いだした。
本心だろう。剣崎さんは俺のことを時々苦しそうに見ることがある。
剣崎さんほど不器用じゃないが生きにくいタイプに俺も属しているのは間違いない。
似ているところを見つける度に救えないもどかしさから苦痛を感じているのだろう。
剣崎さんはSっけたっぷりなのにどMでしかない。

少なくとも自分よりマシな生き方を選んでもらいたいと思っているのは感じる。
だから、エロ漫画家ではなく少年誌や青年誌で働いてもらいたいと思っているに違いない。

結局この日も剣崎さんとは物別れで終わった。
京浜東北線に乗り込む剣崎さんを見送り俺は京急の赤い電車に乗った。
上大岡まではそう遠くない。
酔った頭で締切間際のエロ漫画のプロットを考えていたが、剣崎さんの口添えするという言葉が頭の隅で鈍い痛みのようになって思考をとりとめのないものにしていた。

JUGEMテーマ:小説/詩

| 駄文 | 15:46 | comments(1) | - |
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剣崎ったら…
| れいら | 2012/05/14 11:15 AM |